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小菅優(ピアノ)

小菅優(ピアノ)


   ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲演奏
   「音楽のように見えないものを感じることこそ
   大切だと思います」


小菅優1.jpg 今秋からベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲を演奏するシリーズ(全8回)を始める。この企画にも驚かされるが、第1回の演奏会のチラシに寄せた文章に、この人のまじめさ、頭の良さを感じずにはいられない。
 いわく「却ってコンピューターなどに支配されている今の世界は表面的になりつつあります。見えるもののみに興味が向いてきているこの世界、音楽のような見えないものを感じることこそ大切だと、私は思います」。演奏家には珍しく、自分の演奏を社会とのかかわりの中から見つめ直すことができる。10歳からドイツで育ったことも影響しているのかもしれない。
 「この世の中に暮らしていて、考えることは若くてもいっぱいあるのです。音楽をしていて無力に思うことがあります。世の中に影響を与えられないことに。人によい音楽を聴いてもらうだけでは物足りません。私自身は他の人の演奏会に行ってインスパイアされることや、人生観が変わってしまうようなことがあるのですから」
 過去のライブ録音を聴くことも好きだという。チェリビダッケのブルックナー、フルトヴェングラーのベートーヴェン、メンゲルベルクのマタイ受難曲など27歳とは思えない古いアーティストをあげた。とにかくさまざまなことに興味があり、自分の栄養としている。オペラも好きで、4月末にウィーンで「ばらの騎士」を見たことを喜んでいた。映画は年に200本見た年もあったという。好きな監督としてマーティン・スコセッシやブライアン・デ・パルマなどをあげ、「おじさんぽいといわれる」と笑う。
 ではなぜベートーヴェンの全曲演奏なのか。
 「ずっと前から考えていたことですが、今一番やりたいのがベートーヴェンでした。ベートーヴェンの曲には、世の中を変えてしまうようなすごさ、勇気を感じます。若い世代に今訴えるために、若い自分が弾かなければならない。ベートーヴェンは何がいいたかったのか、自分も一緒に考えていきたい。ドイツでも音楽学生がコンサートに行きません。ただこもって練習していてもしようがない。コンサートに行くとすごく勉強になります。先生のいったことをただやるだけではだめ。自分で考えてクリエイトしていかなければアーティストになれません」ときっぱり。
 昨年初めてバイロイト音楽祭に行き、「トリスタンとイゾルデ」を聴いた。
 「バイロイトはオーケストラがピットの中で見えないので、聴覚に集中しなければいけません。見えない音楽で涙が出てきました」

 

Yu Kosuge
高度なテクニックと美しい音色、若々しい感性と深い楽曲理解で最も注目を浴びている若手ピアニストの一人。1983年東京生まれ。東京音楽大学付属音楽教室を経て、93年よりヨーロッパ在住。9歳でリサイタルを開き、オーケストラと共演している。2006年8月、ザルツブルク音楽祭で日本人ピアニストとして2人目となるリサイタル・デビューを果たす。 第13回新日鉄音楽賞 、アメリカ・ワシントン賞、第17回出光音楽賞などを受賞。


こ こ で 聴 く

■コンサート
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ
全曲演奏会シリーズ第1回
10月21日(木)19:00 いずみホール(大阪)
10月27日(水)19:00 紀尾井ホール
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第1番
ピアノ・ソナタ第2番
ピアノ・ソナタ第3番
■問い合わせ:カジモト・イープラス
☎0570-06-9960


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