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レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)
ノルウェー室内管とモーツァルトの弾き振りを
アーノンクール、ウィーン・フィルと2度目の共演
「もしかしたらモーツァルトもここに座っていたかも知れない」。1705年創立のカフェ・トマセッリの席についてアンスネスが微笑む。明晩には、アーノンクール指揮ウィーン・フィルとのピアノ協奏曲イ長調K488の共演を控えていた。ザルツブルクのモーツァルト週間も半ば、作曲家の254歳の誕生日にあたる1月27日、満場の祝祭大劇場に登場。温かな共感をもって、彼の信じるモーツァルトを堂々と真摯に、しかし謙虚に朴訥に語りかけた。アーノンクール、そしてウィーン・フィルとの共演は2度目、2006年にもここザルツブルクで、モーツァルトの変ホ長調K449とハイドンのト長調の協奏曲を演奏している。
「アーノンクールは無数のアイディアに溢れた、素晴らしい想像力のもち主だ。この協奏曲の背景だけでなく、オペラなどの舞台作品も多く手がけ、そこにも多くの関連を見出している。シアトリカルなアプローチをとり、つねに驚きの要素をもつことを求める彼との共演は実に新鮮だ。彼ら固有の伝統とは異なる解釈を、アーノンクールは同じくオーストリア出身の偉大なオーケストラに教えようとしている。指揮者よりも教師としての仕事にむしろ大きな情熱を注いでいるかのように思える。とにかく学ぶべきことは多いよ。そして、僕は自分の道を見出そうとしている、ナチュラルに感じられる音楽をすることをね。そのうえで、驚きに充ち、論理的に筋の通った演奏をすることは可能なはずだから」
しかし、モーツァルトに関して言えば、室内オーケストラと共演するほうがずっと演奏しやすい、と率直に打ち明けた。「まず木管楽器の役割が独特だし、きわめて室内楽的な音楽づくりが求められる。室内オーケストラではたいてい指揮者なしで演奏するから、すべての演奏家が直接に対話することから多くを得られる。コミュニケーションがとても大切で、それこそ演劇的な音楽だと僕は思う」
この3月にようやく初来日するノルウェー室内管弦楽団との共演でも彼はモーツァルトに集中し、東京オペラシティと兵庫県立芸術文化センターではザルツブルクと同じイ長調K488とハ短調K491、トッパンホールでは前者にかえて変ホ長調K449を採り上げる。
「ノルウェー室内管弦楽団との来日は、僕の長年の夢だった」。首席ゲスト・リーダーの肩書をもってコラボレーションを続けるアンスネスは、「フレッシュで素晴らしく柔軟な」同朋の音楽づくりを称賛する。「今シーズンからイザベル・ファン・クーレンが2人目の音楽監督として加わっている。今回の来日でも、僕がリーダーを務めるモーツァルトの協奏曲のほかは、彼女がリードするので、そのコントラストも楽しんでいただけたらと思う」
インタビュー=青澤隆明◎音楽評論家
撮影・青澤隆明
Leif Ove Andsnes
1970年、ノルウェーのカルメイに生まれ、ベルゲン音楽院でイルジ・フリンカに師事。87年にオスロでデビュー。89年にはアメリカとカナダに、92年にはベルリン・フィルにデビューし、「新世代の中で最も確立されたピアニスト」(ニューヨーク・タイムズ)として注目を集める。 2004~05年にはカーネギーホールの「パースペクティブ・シリーズ」に歴代最年少アーティストとして出演。2002年、ノルウェー王国聖オラフ勲章を受章したほか受賞歴多数。
こ こ で 聴 く
レイフ・オヴェ・アンスネス
&ノルウェー室内管弦楽団
3月20日(土) 14:00
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
■問い合わせ:芸術文化センターチケットオフィス
☎0798-68-0255
3月21日(日) 14:00
東京オペラシティコンサートホール
■問い合わせ:ジャパン・アーツぴあ
☎03-5237-7711
3月22日(月)15:00 トッパンホール
■問い合わせ:トッパンホールチケットセンター
☎03-5840-2222
南紫音(ヴァイオリン)
「学校の仲間と室内楽を演奏する機会ができたことが、すごくうれしい」
3月に2枚目のアルバムをリリース
この3月に、2枚目のCDをリリースする。2年ぶりのアルバム・タイトルは「ブルーム(開花)」。24歳のリヒャルト・シュトラウスが書いたヴァイオリン・ソナタをメーンに、サン=サーンスのヴァイオリン・ソナタ第1番、それにドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」「美しい夕暮れ」、ラヴェルの「ハバネラ形式の小品」というショートピース3曲を配する。感情の激しいうねりと瑞々しさが特徴の大曲と、火照(ほて)る心を冷ましてくれるような小曲の組み合わせが面白い。
「これまでは自分で聴いていて気に入った曲を取り上げてきましたが、今回は〝開花〟というテーマに沿った作品を選びました。管弦楽曲の各楽器の音色さえ感じさせるシュトラウスの初々しい雄大なソナタ、様々な文化が花開いた19世紀末から20世紀初頭にかけてのパリをイメージさせるラインアップです」
今回の使用楽器はグァルネリ・デル・ジェス。1枚目のアルバム「デビュー・リサイタル」では、ストラディヴァリウスを借りて弾いた。
「ストラドは、音が本当に輝かしい。それまでオールドの楽器を持ったことがなくて、初めて手にした時は楽器の持つ音色のパレットの多さに驚きました。自分の表現したいことを超えたものが出てきて、逆に助けられた思いがしました。今回のデル・ジェスは全然違うキャラクター。絵に例えると、ストラドは1本の線があって、そこからキラキラしたものが放たれている感じ。デル・ジェスの方は一本、太い線がすーっと延びていくようなイメージです」
さて、この2年間で、身の回りの一番の変化といえば、東京の大学(桐朋学園大学)に通い始めたこと。
「学校の仲間と室内楽を演奏する機会ができたことが、すごくうれしい。高校までは普通校だったので、室内楽の経験がなかったのです。音で会話できるということは素晴らしいこと。ベートーヴェンの初期の弦楽四重奏曲などを練習していますが、相手の音に耳を傾け、話し合いながら演奏することは、細かいニュアンスをとらえる上でもいい訓練になりますし、ソリストやオーケストラの一員として演奏する時にも、とても勉強になっています」
自分が出演するオーケストラのコンサートで、ソリストとしての出番が終わっても、メーンのオーケストラ曲も聴いていくようになったという。また自身の作曲家への関心はこのところ、モーツァルトやベートーヴェンなどの古典に強く傾いてきた、とも。
「ベートーヴェンは子供の頃から一番好きな作曲家で、全10曲のソナタはぜひ弾いてみたいですね。」
将来的にはヨーロッパへの留学も視野に入れており、さらなる飛躍を期待したい。
Shion Minami
北九州市生まれ。篠崎永育、篠崎美樹、西和田ゆうに師事。現在は原田幸一郎に師事し、桐朋学園大学に在学中。2005年、16歳でロン=ティボー国際音楽コンクールで2位受賞。以来、フランス国立管弦楽団、ミラノ・スカラ座室内合奏団など、国内外のオーケストラと共演。09年、第11回ホテル・オークラ音楽賞に選ばれる。
こ こ で 聴 く
■CD
「Bloom」
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ
サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ 第1番ほか
(ピアノ)江口玲
(ユニバーサル)UCCY-1014(SHM-CD)
3000円 3月10日発売
■コンサート
アルバム発売記念リサイタル
3月16日 佐賀市文化会館
20日 市川市文化会館
22日 調布市文化会館
ウィーン・フィル
ニューイヤー・コンサート 2010
巨匠プレートルが聴きなれた名曲から新鮮な味わいを
●ヨハン・シュトラウス2世:「酒・女・歌」/常動曲/「美しく青きドナウ」●オッフェンバック:喜歌劇「ライン川の水の精」序曲●ロンビー:「シャンペン・ギャロップ」、他
ジョルジュ・プレートル(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ユニバーサル)UCCD-1256/7 3000円
プレートルは2008年につづく2度目の登板。冒頭の「こうもり」序曲からこの指揮者の個性は明確に刻印されている。細かなテンポの動きを駆使してさまざまなニュアンスを醸し出し、聴きなれた序曲から新鮮な味わいをひきだす。プレートルの故国フランスにちなんだ作品も多く取り入れられ、独自のユーモアを交えた表現で魅了する。「北国のシュトラウス」と呼ばれたデンマークの作曲家ロンビーの作品が加えられたのも新機軸。生気に富む作品である。
フリードリヒ・グルダ/
モーツァルト・アーカイヴ完全版
モーツァルトと一体化したグルダ
●(CD1)モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番/第12番/第13番(CD2)ピアノ・ソナタ第1番/第2番/第3番/第4番(CD3)ピアノ・ソナタ第5番、他
フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1480/5 8000円
グルダにインタビューしたのはたった一度。しかし、内容はすこぶる密度が高く、いまでも細部まで記憶している。演奏もそうだった。何年たってもあの響きは忘れられない。これまで何枚か未発表音源が日の目を見、そのつど心躍る思いを味わったが、このモーツァルトも魅力満載。彼は「モーツァルトの後継者は自分だ」と真顔で語っていた。ここにはまさにモーツァルトと一体化したグルダがいる。ボーナスCDを追加した息子パウルに感謝!


