お薦めコンサート

石合 力◎朝日新聞編集委員

フォン・オッター、最後の来日ツアーでバッハからスティングまで

アンネ・ゾフィー・フォン・オッター
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター
©Ewa-Marie Rundquist

■アンネ・ゾフィー・フォン・オッター
 (メゾソプラノ)〈聖なる一夜〉

ファビアン・フレドリクソン(g)、
クリストフ・ベルナー(p)
シューベルト:冬の夕べ、ヴォルフ:眠るみどりごイエス、
R.ウェルズ&M.トーメ:ザ・クリスマス・ソング、他
12月10日(水) 19:00
兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール(予定枚数終了)
〔12月4日(木) 19:00 横浜市青葉区民文化センターフィリアホール、
 12月6日(土) 14:00 高崎芸術劇場 音楽ホール、
 12月8日(月) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール〕

■下野竜也指揮九州交響楽団「第九」

吉原圭子(S)小林由佳(A)小原啓楼(T)宮本益光(Br)北九州市民フロイデコール
ベートーヴェン:交響曲第9番 《合唱付き》 
12月20日(土) 15:00 J:COM北九州芸術劇場、
21日(日) 15:00 福岡シンフォニーホール〔下野竜也指揮札幌交響楽団「札響の第9」にも注目。
12月13日(土) 17:00 、14日(日) 13:00 札幌コンサートホール Kitara〕

■奇跡のチェロ・アンサンブル 2025

辻本玲、伊藤悠貴、小林幸太郎、伊東裕、岡本侑也、上野通明(以上vc) 
12月28日(日) 14:00 住友生命いずみホール
〔東京公演は、12月29日(月) 19:00 サントリーホール〕


 主に西日本の演奏会から紹介する。世界的なメゾソプラノ歌手アンネ・ゾフィー・フォン・オッターが最後の来日ツアーでクリスマス・ソングを歌う。《ばらの騎士》オクタヴィアン役などの当たり役で世界各地の著名オペラハウスに出演したほか、アバド、ラトル時代のベルリン・フィルとマーラー《大地の歌》などで共演を重ねた。時代とジャンルを超えた幅広いレパートリーで知られ、プログラムではバッハ、シューベルトに加え、スティングや祖国スウェーデンの民謡も。ピアノ伴奏のベルナーはベーゼンドルファー・ピアノコンクールに優勝。ソリスト、室内楽で活躍する。ギターのフレドリクソンは、グラミー賞を受賞した彼女のアルバム《Douce France》にも参加した。小ホールで繊細な声を味わいたい。

 今年も第九の季節に。数ある演奏会のなかで下野竜也指揮、九州交響楽団の演奏に注目したい。下野は広島交響楽団の音楽総監督を昨年春に退任。現在は、NHK交響楽団の正指揮者、札幌交響楽団首席客演指揮者などを務める。九響との演奏会前には、札響とも第九を演奏する。今年は、新作オペラ《みづち》、《平家物語-平清盛-》などで声楽曲にも積極的に取り組んだ。オケと歌手のバランス、響きを保ち、完成度の高い演奏を続ける下野が、各地のオケへの客演で《歓喜の歌》をどう聴かせるか。

 N響首席の辻本玲ら気鋭の若手チェリスト6人による「奇跡のチェロ・アンサンブル」が昨年に続いて開かれる。前半では6人が1曲ごとにソロを担当。後半では、ヴィヴァルディの《冬》やシベリウスの《フィンランディア》などをチェロの合奏版で演奏する。


清宮美稚子◎本誌編集

ショパン国際ピアノコンクールの覇者が早くもN響に登場

ファビオ・ルイージ指揮 NHK交響楽団 第2053回定期公演 Cプログラム

第19回ショパン国際ピアノコンクール優勝者(p)
ショパン:ピアノ協奏曲第1番または 第2番、ニルセン:交響曲第4番 《不滅》
12月12日(金) 19:00、13日(土) 14:00 NHKホール

ヤメン・サーディ ヴァイオリン・リサイタル

ジュリアン・カンタン(p)
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番、フォーレ:同第1番、 フランク:同イ長調、
ファリャ(クライスラー編曲):スペイン舞曲《マラゲーニャ》《はかなき人生》《タンゴ》
12月7日(日) 14:00 杉並公会堂、11日(木) 19:00 グランシップ中ホール・大地

濱田芳通
濱田芳通

濱田芳通&アントネッロ第20回定期公演
「カルミナ・ブラーナ」(中世ブラヌス写本)

濱田芳通(指揮、リコーダー) 、
アントネッロ(古楽アンサンブル)
曲目:中世ブラヌス写本より
12月11日(木) 15:00、19:00 横浜みなとみらいホール 小ホール


 まずはなんといってもN響の定期公演。ショパン国際ピアノコンクールの覇者が、ショパンのどちらかの協奏曲でお目見えする。

 4年前を思い出す。11月8日「NHK音楽祭2021」のN響公演。優勝者がわかる前の段階で発売されたチケットを買い、結果的にブルース・リウの日本デビューを目の当たりにすることができた。今回、一般発売日は10月26日なので、すでにコンクールの結果は出ている。チケットの出足は非常に早いと思われるのでご注意を。

 ウィーン・フィルの新コンサートマスター、ヤメン・サーディ(本号「アトランダム」参照)のリサイタルが2箇所で行われる。ウィーン国立歌劇場コンマスの激務の試用期間3年を経て正式就任。ますます飛躍した姿を日本で見せてくれるだろう。北欧・フランス・スペインの作品からなるプログラムに期待したい。

 濱田芳通とアントネッロが演奏する中世の「カルミナ・ブラーナ」とは、13世紀の中世詩歌の集大成「ブラヌス写本」のこと。中には、恋、酒、風刺、欲望が詰まった約250編の詩があり、うち旋律が付されているなどで演奏可能なのは50編だという。即興性溢れる自由な演奏が持ち味の濱田&アントネッロから、どのような中世の音の絵巻が紡ぎ出されるだろうか。

 もう一つ紹介したかったが、すでに完売なのが「第31回リクルートスカラシップコンサート」(12月25日(木)15:00 東京オペラシティ コンサートホール)。MINAMI、HIMARI、北村陽、亀井聖矢、牛田智大はじめ総勢19名の若手による室内楽プログラム。1週間視聴可のオンライン視聴チケットがあるので、ご興味のある方はどうぞ。