岡本稔◎音楽評論家

ナタリー・シュトゥッツマン(指揮)、アトランタ交響楽団
(ワーナー)WPCS-13894
3410円
※SACD Hybrid
しなやかな旋律美、ブルックナー解釈の可能性広げる
指揮者シュトゥッツマンのディスク第2作。何としなやかな歌に満ち溢れたブルックナーだろう。この作曲家の作品解釈といえば、音響による巨大な伽藍を築き上げる手法が広くとられてきたが、彼女はブルックナー解釈に別の可能性があることを明快に示している。これほどの旋律美があることを実感させる裏付けとなったのは、長年にわたる声楽家としてのキャリアであろう。オーケストラの水準も高く、作品にふさわしい重量感も併せ持つ。

太田弦(指揮)、九州交響楽団
(EXTON)OVCL-00929
3850円
※SACD Hybrid
純粋な音楽作品に接する姿勢で指揮、現代曲の性格帯びる
2024年から九州交響楽団の首席指揮者の任にある太田弦の初のマーラー。若手が初めてマーラーに取り組む場合、第1番、第5番あたりというのが一般的だが、太田はこの曲に対する過度の思い入れを一掃して、純粋な音楽作品に接する姿勢で彼の第9番を作り上げている。マーラーの伝記的要素を持ち込むことなく、スコアから読み取れる情報によって音楽を構築。死への恐怖や絶望といった想念を排除したマーラーはより現代曲の性格を帯びる。
伊熊よし子◎音楽評論家

リゲティ:ムジカ・リチェルカータ/クルターグ:遊び(抜粋)/
ベートーヴェン:ディアベッリの主題による33の変奏曲 ほか
セドリック・ティベルギアン(ピアノ)
(Harmonia Mundi)HMM902437F
オープン価格
※輸入盤国内仕様、2CD
プロジェクト完結を飾る斬新な《ディアベッリ変奏曲》
2027年のベートーヴェン没後200年のメモリアルイヤーに向け、ベートーヴェンの新譜が次々に登場している。フランスの実力派ピアニスト、C.ティベルギアンが取り組んでいる「ベートーヴェン変奏曲プロジェクト」の完結編がついに登場。リゲティとクルターグを組み込んだ独特の選曲で、2枚目には《ディアベッリ変奏曲》が収録されている。この《ディアベッリ》がとても刺激的で斬新。ベートーヴェンの珍しい変奏曲も数多く収録され、ティベルギアンの磨き抜かれた美音と説得力のある解釈と奏法が全編を覆い、聴き手に新たな発見を促す。
石戸谷結子◎音楽評論家

リセット・オロペサ(ソプラノ)、アイグル・アクメチーナ(メゾソプラノ)、イスマエル・ジョルディ(テノール) 、ロベルト・タリアヴィーニ(バス)ほか
ホセ・ミゲル・ペレス=シエラ(指揮)、マドリード王立劇場管弦楽団&合唱団、デイヴィッド・マクヴィカー(演出)
(Naxos)NYDX-50442
5500円
※BD、輸入盤国内仕様、日本語字幕・解説付き
誇り高き女王二人の衝突がスリリング
2024年12月マドリッド王立劇場でのライヴ。これまでヴィオレッタやルチアなどの可憐な娘役を得意としてきたオロペサが、悲劇の女王マリアに果敢に挑んだ話題の舞台。彼女を断頭台に送る冷酷なエリザベッタは、若き期待のメゾ、アクメチーナ。誇り高き女王二人によるスリリングな激突場面は、手に汗握るクライマックスだ。マリアを陰で支えるタルボット役のタリアヴィーニの朗々たる美声と深い表現力も聴きもの。オロペサは2幕後半からドラマチックな歌唱を繰り広げ、マリアの苦悩を見事に表現した。時代考証に基づいたマクヴィカーの重厚な舞台も見どころ。
鈴木淳史◎音楽評論家

R.B.シャーマン&R.M.シャーマン:《メリー・ポピンズ》組曲より/
鄧雨賢:《春風に焦がれる思い》前奏曲/山田耕筰:赤とんぼ/
R.ロペス&K.A.=ロペス:雪だるまつくろう/シャミナード:トッカータ/
ウィリアムソン:花市場/シューマン:予言の鳥 ほか
スティーヴン・ハフ(ピアノ)
(Hyperion)7128469
オープン価格
絵葉書のようにそれぞれの曲のキャラクターを際立たせる
世界を巡るピアニストが、旅先から音楽のメッセージを送るというコンセプト。絵葉書のようにそれぞれの曲のキャラクターを際立たせたアンコール集だ。ハフ自ら編曲を手がけた作品も多く、ディズニー映画の有名曲を超絶技巧作品にアレンジした上、途中でベートーヴェンのソナタなどが顔を覗かすなどの仕掛けも。深々としたニュアンスで織り上げた《赤とんぼ》、冷たくて