岡本稔◎音楽評論家

ヤン・リシエツキ(ピアノ)、マンフレート・ホーネック(指揮)、
バンベルク交響楽団
(Deutsche Grammophon)4868410
オープン価格
※輸入盤
リシエツキの指先から音楽が自然に飛翔
ホーネックの指揮がソロと深い対話交わす
10代からグラモフォンのアーティストとして活躍するカナダのピアニストの最新盤。モーツァルトやショパンの作品で高い評価を得ている俊英ならではの音楽といえる。指先から自然にほとばしり出るような音楽は聴き手を優しく包み込む魅力を持つ。ウィーン・フィルのヴィオラ奏者をつとめた経験をもつホーネックは、モーツァルトを知り尽くしたタクトで自由に飛翔するソロと味わい深い対話を交わす。バンベルク響のしっとりとした音色もふさわしい。

クリスティアン・アルミンク(指揮)
広島交響楽団、石橋栄実(ソプラノ)
(BRAIN×TOWER RECORDS)OSBR42180
2750円
アルミンクの洗練された表現
ウィーン的薫りよぎるオケの響き
被爆80周年《平和の夕べ》コンサートの東京公演のライヴ。アルミンクの音楽監督就任後、2枚目のディスクにあたる。この指揮者特有の洗練された音色と表現によるマーラーといえるだろう。ここではオーケストラの響きはやや重みを増し、時にアルミンクの生地ウィーン的な薫りもよぎる。どちらかといえば都会的な味わいが際立つが、その精妙なつくりは説得力が大きい。石橋栄実のソロのドイツ語のディクションも配慮が行き届いている。
伊熊よし子◎音楽評論家

椿三重奏団
(ART INFINI)MECO-1090
3850円
作曲家の懐に近づくアンサンブルの妙
2019年に「椿三重奏団」と命名されたピアノ・トリオは、ピアノの高橋多佳子、ヴァイオリンの礒絵里子、チェロの新倉瞳というそれぞれソリストとして活動している3人のユニット。録音をリリースするごとに絆の深さを示してきたが、今回のシューベルトはさらに音の成熟、アンサンブルの妙が発揮されたもの。お互いの音に注意深く耳を傾けながらも自身の音を主張し、シューベルトの懐に近づく。豊かな歌心に支えられた馨しく芳醇な音の調べの誕生だ。
石戸谷結子◎音楽評論家

ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ (ペリーヌ編)、《マ・メール・ロワ》より〈眠れる森の美女のパヴァーヌ〉〈妖精の園〉(マシュエル編)、《子供と魔法》より〈薔薇の芯よ〉(ゴットヴァルト編)、《シェエラザード》より〈魔法の笛〉〈つれない人〉(ペッソン編) ほか
レオ・ヴァリンスキ(指揮)、レ・メタボール
(B Records)NYCX-10585
3740円
※輸入盤国内仕様、日本語解説・歌詞訳付き
ラヴェルの傑作をア・カペラで描き出す
2025年3月10日、絶賛されたパリでのコンサートのライブ。各パート6名ずつからなるフランスの合唱団、レ・メタボール。このライブではラヴェルの名曲の数々を、なんとア・カペラで演奏した。《亡き王女のためのパヴァーヌ》《子供と魔法》や《シェエラザード》からの数曲など。最後は15分の《ボレロ》を、楽器を使わず、さまざまな声や口笛、手などを駆使して歌いあげた。何人かの編曲者に曲を委ねることで、バラエティに富み、斬新で遊び心に満ちたプログラムになった。
鈴木淳史◎音楽評論家

ショパン:ノクターン・メディテーション(夜想曲第12番)、フューネラル・マーチ・メディテーション(ソナタ第2番第3楽章)、ピアノ協奏曲イ長調《ワルシャワへの帰還》、ポロネーズ第11番、マズルカ 嬰ハ短調(ヴァイオリンとピアノ版)ほか
マルティン・シュタットフェルト(ピアノ)、アンドレア・チカレーゼ(ヴァイオリン)、ティモ・ヨウコ・ヘルマン(指揮)、ハイデルベルク交響楽団
(Sony Classical)88985431442
オープン価格
鬼才によるクリエイティヴで瞑想的なショパン
かつて練習曲と自身の即興を交えたアルバムがあったシュタットフェルトだが、今回もずいぶんと風変わり。メディテーション版として独自のアレンジを加えたものも。たとえば、ソナタ第2番の葬送行進曲は、中間部のみを取り出し、激遅テンポで即興的に色彩を添えていく。原曲演奏もどこか瞑想的な解釈だ。極めつきは、架空の協奏曲第3番の創造。作曲家の構想通りに《演奏会用アレグロ》の第1楽章に、《ボレロ》を編曲した後続楽章を連ねていく。