岡本稔◎音楽評論家

ジョネ・マルティネス(ソプラノI)、澤江衣里(ソプラノII)、ベンヤミン・ブルンス(テノール)、鈴木雅明(指揮)、バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱、管弦楽)
(ナクソス)NYCX-10579
3740円
※BIS原盤、SACD Hybrid、輸入盤国内仕様、日本語解説付き
ピリオド奏法の清新な演奏
バッハ復興に貢献した作曲家への共感豊か
鈴木雅明にとって、バッハ復興に貢献を果たしたメンデルスゾーンに大きな興味を抱くのは当然のことだろう。この演奏は2024年の宗教改革記念日に東京で初披露した際、予め収録されたもの。ピリオド奏法によるメンデルスゾーンの音楽は清新で、バッハの音楽に彼が深く傾倒したことを改めて認識させる。シンフォニアでは隅々まで配慮の行き届いた演奏を聴かせ、続く声楽の入った楽章でも演奏者はみな共感豊かな音楽を実現している。

アレクサンドル・クニャーゼフ(チェロ)、山田和樹(指揮)、
横浜シンフォニエッタ
(ナクソス)NYCX-10565
3,520円
※Avanti Classic原盤、輸入盤国内仕様、日本語解説付き
ソヴィエト時代を体験したチェリストの含蓄
山田和樹率いるオケが緻密な表現でソロと対峙
1959年に成立した第1番では、力強い楽想をクニャーゼフの豊かな音色のソロが骨太に描き出していく。緩徐楽章の情感も味わい深く、心に残る。作曲者の健康状態の悪化するなか、1966年に書き上げられた第2番では、内省的な味わいとアイロニー的な要素も加味された作品の全体像を的確に描く。ソヴィエト時代に身を置いたクニャーゼフならではの含蓄に富んだ演奏といえるだろう。山田和樹と彼が設立したオーケストラは緻密な表現でソロと対峙する。
伊熊よし子◎音楽評論家

ラフマニノフ:《14の歌曲》より〈ヴォカリーズ〉/ドビュッシー:レントより遅く/フォーレ:《3つの歌曲》より〈夢のあとに〉/クルト・ヴァイル:ユーカリ/ジョゼフ・コスマ:枯葉 ほか
ダニエル・ロザコヴィッチ(ヴァイオリン)、エレーヌ・メルシエ(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-13886
3410円
※SACD Hybrid
成熟した音楽性が、聴き手の心をとらえる
ダニエル・ロザコヴィッチの初来日は2017年。このときのインタビューでは「7つの民族の血を受け継ぎ、4カ国語が話せる」と語っていた。音楽に対して真摯で、率直な語りが印象的だった。その後スター街道を歩み続けているが、新譜は彼の特徴である内省的な音色と秘めた情熱と思索的な面が全編を覆う。2001年生まれとは思えない成熟した音楽で、豊かな歌心と静謐な語りが聴き手の心をとらえる。ピアノのメルシエとの絆の深さも特筆すべきだ。
石戸谷結子◎音楽評論家

ミューリー:輝かしい被造物/思い起こしてください、主よ/精髄/結実/走り書きのメモ/安らぎは得られない
タリス・スコラーズ、ピーター・フィリップス(指揮)
(Linn Records)NYCX-10578
3740円
※輸入盤国内仕様、日本語解説・歌詞訳付き
聖なる声が、現代社会を問う
ミューリーは幅広いジャンルで活躍するアメリカの作曲家。METライブビューイングでも上演されたオペラ《マーニー》の作曲者だ。これは彼が10人からなるユニークなアカペラのグループ、タリス・スコラーズのために作曲した合唱曲のアルバム。その演奏は透明で輝かしい声が重なり合い、さまざまな表情を見せる。ミューリーが選ぶテキストが素晴らしく、現代社会への問題を投げかける。《安らぎは得られない》では、いまなお世界の深刻な問題である移民たちの悲しい歴史が綴られる。
鈴木淳史◎音楽評論家

作者不詳:キリストは勝利し給う、救世主について予言したバラム、主を賛美せよ/レオニヌス:この日こそ/ペロティヌス:地上のすべての国々は ほか
パウル・ファン・ネーヴェル(指揮)、ウエルガス・アンサンブル
(Musica Ficta)MF8041
オープン価格
老舗アンサンブルが引き出す、中世ポリフォニーの面白さ
ソニー・クラシカルで長らくこのジャンルの看板アーティストを務めてきた、古楽ヴォーカル・アンサンブルの老舗。レーベルを移籍しての第1弾は、ポリフォニーの原点、ノートルダム楽派だ。洗練されすぎず、民族音楽と完全に一体化することもない、彼らの絶妙なバランスが曲の面白さ、斬新さを引き出す。笑っちゃうくらいリズムが明確なレオニヌス作品。ポスト・ミニマル派からの視線も熱いペロティヌス作品は、起伏と仕掛けに満ちる。