新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ベートーヴェン:交響曲第5番、R.シュトラウス:交響詩《英雄の生涯》

ベートーヴェン:交響曲第5番、
R.シュトラウス:交響詩《英雄の生涯》

小澤征爾(指揮)、バイエルン放送交響楽団、
エルネ・シェベシュティーン(ヴァイオリン・ソロ)
(ナクソス)NYCX-10604 
3410円
輸入盤国内仕様、解説日本語訳・日本語書き下ろし解説付き
※BR Klassik原盤

小澤とオケの個性が理想的に融合された《英雄の生涯》

 小澤がバイエルン放送交響楽団を指揮したのは2回(4演奏会)のみ。2回目の1990年1月の録音がディスク化された。生で演奏会を聞いた私は、心から感動したことを覚えている。南ドイツ的な暖かな響きと歴代の名指揮者の薫陶のもと育まれた持ち味をありのままに活かし、小澤の鋭敏な感性が投影された音楽は有無を言わさぬ説得力を持つ。なかでもミュンヘンの作曲家、R.シュトラウスの代表作は両者の個性が理想的に融合された名演だ。

ウィーン・フィル・シェーンブルン・サマーナイト・コンサート2026

ウィーン・フィル・シェーンブルン・
サマーナイト・コンサート2026

ロレンツォ・ヴィオッティ(指揮)、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ブリン・ターフェル(バス・バリトン)、
アルベナ・ダナイローヴァ(ヴァイオリン)
(ソニー)SICC-2396
2970円
輸入盤国内流通仕様、日本語解説・対訳付き
※Blu-ray、DVDもあり

珠玉の名曲と巧みな匙加減でヴィオッティが聴衆を魅了

 ウィーン・フィルの指揮者陣の一角を占めるようになったヴィオッティが恒例行事のタクトをとった。こうした野外演奏会では、選曲が成否をわける鍵となる。定期会場では精妙な音楽づくりで凝縮された世界を指向するのに対し、野趣あふれる開放的な空間ではそれに見合う曲と表現が求められるからだ。ヴィオッティは珠玉の名曲の連なりでそれにこたえている。オーケストラの優美で洗練された特性をいかしながら、巧みな匙加減で聴衆に訴えかける。

器楽・室内楽

伊熊よし子◎音楽評論家

「アペール」

「アペール」

メル・ボニス:《伝説の女たち》よりメリザンド、デズデモーナ、
オフィーリア、ヴィヴィアン、ポイペー、サロメ、オンファレ/
ドビュッシー:喜びの島/ラヴェル:夜のガスパール/
ドビュッシー:月の光
角野未来(ピアノ)
(APPELS)TPCM-00001
3800円

ベル・エポック期のパリを彷彿とさせるアルバム

 2023年秋よりフランスのリヨン音楽院で研鑽を積んでいる角野未来が、ドビュッシーやラヴェルと同時代に生きた女性作曲家メル(メラニー)・ボニスの作品に光を当て、個性的なアルバムを完成させた。ボニスの《伝説の女たち》はベル・エポック期のパリを彷彿とさせ、ドビュッシーとラヴェルの作品と共鳴して時代を映し出す。この7曲はぜひナマで聴いてみたいと思わせる魅力的な内容で、他の曲も聴きたい気持ちが募る。作品との出会いはフランス留学の賜物だろうが、その探求心と創造性に拍手喝采。聴き手の想像力も喚起する。解説書も充実。

オペラ& 声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

シューマン:オラトリオ《楽園とペリ》

シューマン:オラトリオ《楽園とペリ》

リナ・ジョンソン(ソプラノ)、ヨハンナ・ローザ・ファルキンガー(ソプラノ)、マリアンヌ・ベアーテ・キーラント(メゾソプラノ)、キーラン・キャレル(テノール)ほか
ジョルディ・サヴァール(指揮)、ル・コンセール・デ・ナシオン、ラ・カペラ・ナシオナル・デ・カタルーニャ
(ALIA VOX)AVSA9968
オープン価格
※輸入盤、2SACD Hybrid

サヴァールが描くシューマン円熟期の傑作

 精力的に活動を広げるサヴァールの新譜はシューマンのオラトリオ。エデンから締め出された妖精のペリが、世界中を旅して探し求める至福の贈り物とは何か。作曲家の円熟期に書かれたこの作品は、壮大なスケールを持ち哲学的で人生の道しるべともなる純度の高い物語。音楽は崇高にして美しく、かつファンタスティック。サヴァールの指揮は静謐から浮かび上がり、豊かな響きの中で軽やかに浮遊する。充実のソリストたちを揃え、ル・コンセール・デ・ナシオンの古雅な響きと合唱が深い感動を呼ぶ。これはまさにシューマンの大傑作。オペラ的な演出付き舞台も見てみたい。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

Bamboo Grove

Bamboo Grove

周龍:竹林、九つの鐘の物語/
陳怡:仙詩、ヴィオラと室内管楽のための組曲
パトリック・イム(ヴァイオリン&ヴィオラ)、ポール・ヴァイランクール(打楽器)、王帥(ピアノ)、ジョン・ディオダティ(クラリネット)、マシュー・オリファント(ホルン)ほか
(PentaTone Classics)PTC5187586
オープン価格

現代曲と中国古典音楽との違和感なき融合

 ともに西洋音楽が禁じられた文化大革命を経験し、現在はアメリカで活躍する中国人作曲家夫婦による作品集。竹林の七賢をテーマにした周龍の《竹林》は、西洋と中国の音楽を 闊達 かったつ に行き来する無伴奏曲だ。陳怡の《仙詩》はバルトーク風に始まるが、次第に中国風味を帯びていく。こうした東西、というより現代曲と中国の古典音楽との連結、融合が違和感なく行われるのだ。とりわけ周龍の作品は、いかにもコワモテな現代曲ながら、妙に人懐っこく軽やかに響く。そして、パトリック・イムの芸達者なパフォーマンス。

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