新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、
シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》

ラハフ・シャニ(指揮)、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
(ワーナー)4396674504
オープン価格
※輸入盤、日本語解説・帯付き

シャニ/ミュンヘン初録音、磨き抜かれた音色で曲の魅力描く

 2026年にミュンヘン・フィルの首席指揮者に就任したシャニと同オーケストラによる初録音。1989年、テルアビブ生まれ、30代後半という若さで南ドイツの名門のトップに就任した彼は、録音からも極めて能力に恵まれていることが実感される。何より響きの純度の高さに驚かされる。チェリビダッケ時代を想わせるなめらかで磨き抜かれた音色は第一級品だ。それぞれの作品にふさわしいアプローチで曲の魅力を明らかにしていく。

HIMARI DEBUT

HIMARI DEBUT

ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番/
ショパン~ハイフェッツ編:夜想曲第16番、
シベリウス:5つの小品~第1曲《マズルカ》 ほか
HIMARI(ヴァィオリン)、セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)、
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、チェルシー・ワン(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCD-45044
3300円 ※Decca原盤

HIMARIの全世界デビュー盤、瑞々しい魅力を発揮

 ヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲第1番はHIMARIが2025年3月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期公演にデビューした際のライヴ。13歳8カ月で天下の名門のソリストをつとめたのは驚嘆に値する。彼女の長所をいかした選曲で、瑞々しい魅力をいかんなく発揮している。2026年6月にNHK交響楽団定期で弾いたシベリウスの協奏曲よりも等身大の音楽で好感が持てる。ショパンやゴドフスキの小品も類まれな表現能力を示すものだ。

器楽・室内楽

伊熊よし子◎音楽評論家

ラ・カンパネッラ~リスト・ピアノ作品集

ラ・カンパネッラ~リスト・ピアノ作品集

リスト:パガニーニによる大練習曲 第3番《ラ・カンパネッラ》、
ピアノ・ソナタ ロ短調、巡礼の年第2年『イタリア』~第5曲《ペトラルカのソネット第104番》、夜想曲《夢の中で》 ほか
阪田知樹(ピアノ)
(ソニー)SICC19099
3850円 ※SACD Hybrid

創造性と洞察力でリスト作品の奥深さ浮き彫りに

 クライバーン・コンクール入賞以降、ずっと取材を行い、聴き続けてきた阪田知樹の演奏。2016年のリスト・コンクール優勝後はさらに才能が大幅に開花し、10年を記念して録音されたリスト・アルバムは、まさにリストの内面へと迫る熟成と創造性と洞察力に満ちあふれた演奏となっている。当初から楽譜の読みの深さには定評があり、テクニックを前面に押し出すことなく、リストの響きの多様性と物語性、情感の豊かさに肉薄するピアニズムに徹していたが、このアルバムでは本人の作曲家&編曲家の面ものぞかせ、リストの作品の奥深さを浮き彫りにする。

オペラ& 声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ピラミッド・リサイタル

「ピラミッド・リサイタル」

プッチーニ:歌劇《ジャンニ・スキッキ》第1幕~私のお父さん、ヘンデル:歌劇《リナルド》第2幕~私を泣かせてください、ムハンマド・アブドゥル・ワッハーブ:泣いているのは私ではない、R.シュトラウス:4つの歌曲~第4曲《明日!》 ほか
ファトマ・サイード(ソプラノ)
サミー・エル・ガダブ(指揮)、レ・フリヴォリテ・パリジエンヌ(オーケストラ)ほか
(Warner)2685461673
オープン価格 ※輸入盤

オペラ・アリアからアラビア語の歌まで、澄んだ美声で披露

 個性的な声と容姿で、世界中のオペラ・シーンで大活躍のサイード。故郷であるエジプト最大の歴史遺産ピラミッドをバックに、その澄んだ美声を披露した。NHKテレビでも放映されたが、観客無しで砂漠にステージを設けての公演。多彩な活動をするサイードらしく、プログラムはバラエティに富んでいる。オペラ・アリアからサルスエラやオペレッタのアリア、シャンソン、アラビア語のエキゾチックな歌まで。彼女の特徴は、透明度の高い声とのびやかな高音。そしてどんなジャンルの音楽でも歌いこなす歌唱力の持ち主だ。これは歴史遺産に捧げる祈りの歌だろうか。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

トリスタン・ジェネレーション

トリスタン・ジェネレーション

ワーグナー:《トリスタンとイゾルデ》より「媚薬の場面」&「ブランゲーネの警告」(ジュルノー編曲)/シェーンベルク:《グレの歌》より前奏曲(ベルク編曲)/ツェムリンスキー:デーメルの詩による幻想曲/詩篇第23番(以下、すべてジュルノー編曲)/ブラウンフェルス:歌劇《鳥たち》より前奏曲/ヴォルフ: 隠棲/シュレーカー:歌劇《烙印を押された人々》前奏曲 ほか
ジュリエット・ジュルノー(ピアノ)
(Alpha)ALPHA1265 
オープン価格

ワーグナーの仕掛けた「媚薬」がじわじわと効いてくる

 《トリスタンとイゾルデ》で示された、解決が訪れずに永遠に彷徨うような不思議な感覚をピアノ1台でたっぷりと味わえる1枚。1曲目から、そんなワーグナーの仕掛けた「媚薬」がじわじわと効いてくるといった趣向がたまらない。シュレーカーやコルンゴルトなどの歌劇や大規模なオーケストラ曲の多くを演奏者自ら編曲。1台のピアノによって和声の揺らぎだけでなく、その時代の雰囲気もよりリアルに伝わってくる。ツェムリンスキーの《詩篇第23番》は、官能性とスケール感が渦巻いて胸が熱くなるほど。

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