新譜CD&DVD一覧

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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブルックナー: 交響曲第8番

マーラー: 交響曲第5番

パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
(ナクソス) ALPHA1127 オープン価格 ※輸入盤

P. ヤルヴィが手兵とのマーラー全曲録音第1弾
ニュアンスを拾い出し、音楽の原像明らかに

 2016年よりチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の首席指揮者兼音楽監督に就任したパーヴォ・ヤルヴィによるマーラー全曲録音の第1弾。パーヴォは世界の名門に数多く客演し、譜読みの確かさと誠実な音楽に対する姿勢は高く評価されてきた。しかし、いわゆるマーラー指揮者という認識はなかったと思う。このマーラーを聴くと、彼が目指すものがよくわかる。これまで激情的な表現にともすると隠されていたニュアンスを拾い出し、音楽の原像を明らかに。

モーツァルト:交響曲 第39番、第40番、第41番《ジュピター》

ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番

井上道義(指揮)
読売日本交響楽団
(オクタヴィア)OVCL-00822 3850円

配慮の行き届いた指揮に応えた読響
井上の芸術を語る上で必聴の演奏

 2022年の収録。井上道義が読売日本交響楽団を指揮した回数はさほど多くないと記憶しているが、ここでは隅々まで配慮の行き届いた完成度の高い演奏を聴かせている。管楽器のソロをはじめ、よくここまで日本のオーケストラがうまくなったと驚かされる。井上はかつて第5番を好きではなく、避けて通っていたという。理由については不明だが、ある時開眼し、ことあるごとにタクトをとった。このディスクも井上の芸術を語るうえで欠かせないものだ。

室内楽&器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

バッハ/ネヴァーマインド 《ゴルトベルク変奏曲》

ヴィルトゥオジティ礼讃

●リスト:《グノーの〈ファウスト〉のワルツ―演奏会用パラフレーズ》/
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第15番/
リスト:《ベッリーニの〈ノルマ〉の回想》、ほか全5曲
ミシェル・ダルベルト(ピアノ)
(ナクソス)LDV148 オープン価格
※輸入盤、La Dolce Volta原盤、日本語解説付き

実力派ピアニストが新たな視点で演奏
目からウロコの発見にあふれる

 フランスの実力派、ミシェル・ダルベルトが「美徳」を語源とするヴルトゥオジティのあるべき姿を探求し、名ピアニストだった作曲家の作品の数々で奥義を披露している。とりわけ印象的なのがモーツァルトのソナタ第15番。ピアノ学習者の多くがこの作品を実際に弾いていると思うが、ダルベルトの腕にかかると馨(かぐわ)しく軽快でエレガントな美質が全開。「こんなにもすばらしい曲だったのか」と目からウロコ。いずれの作品も新たな視点で見ることを促し、楽譜を検証したくなる。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

プッチーニ:歌劇《トスカ》

チャイコフスキー:歌劇《エフゲニ・オネーギン》

ステファヌ・ドゥグー(オネーギン)、サリー・マシューズ(タチアーナ)、
ボグダン・ヴォルコフ(レンスキー)、ほか
アラン・アルティノグリュ(指揮)、モネ交響楽団&モネ合唱団
ロラン・ペリー(演出・衣装)
(ナクソス)NYDX50398 4950円 ※BD、輸入盤国内仕様、日本語
解説・対訳付き

微妙で繊細な照明で物語が進行
シンプル極まりないペリー演出

 2023年モネ劇場の映像。ペリーの演出は、シンプルな木製舞台と木製衝立のみ。微妙で繊細な照明で物語が進行する。全体は幻想的で全てはタチヤナの夢かも知れない。オネーギン役ドゥグーは美声のバリトンで演技も巧み。マシューズのタチアーナも演技力があり、3幕の幕切れの二重唱はドラマチック。レンスキー役のウクライナのテノール、ヴォルコフの歌唱が若々しく叙情的。アルティノグリュの指揮がメランコリックな音楽をニュアンス豊かに奏でて聴きもの。

ラヴェル・フラグメンツ

J.S.バッハ:ミサ曲 ロ短調 BWV232

ヒラリー・クローニン(ソプラノ)、
レジナルド・モブリー(アルト)、ほか
ジョン・エリオット・ガーディナー(指揮)、
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ&モンテヴェルディ合唱団
(ナクソス)CVS135 オープン価格
※BD+DVD、輸入盤、Chateau de Versaille原盤、日本語帯付き

合唱と管弦楽が一体の精緻な演奏
ヴェルサイユ宮殿の壮麗さも印象的

 2023年4月、指揮者80歳直前の公演。ガーディナーにとっては3回目の録音で、壮麗なヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂の映像も感動を呼ぶ。ソリストはモンテヴェルディ合唱団のメンバーたちで、ソプラノやアルトのカウンターテナーが聴きどころ。ピュアな古楽器の音色、合唱と管弦楽が一体となった精緻な演奏が見事。ガーディナーは2023年8月に事件を起こし、同合唱団&管弦楽団を離れているので、自ら創設したアンサンブルとの最後の共演となる貴重な映像。