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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

ジャニーヌ・ヤンセン(ヴァイオリン)
クラウス・マケラ(指揮)
オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
(ユニバーサル) UCCD-45028
3080円 ※Decca原盤

ヤンセン9年ぶりの協奏曲録音は初のシベリウス
マケラ/オスロ・フィルとの絶妙な駆け引きも聴きもの

 ヤンセンの協奏曲録音は9年ぶり。シベリウスを入れていなかったのは意外な印象もあるが、マケラとオスロ・フィルというまたとない共演者を得て、彼女のヴァイオリンは冴えわたる。音楽の表情は一見、知的でクールだが、内に秘めた情熱も感じさせる。歌心に富み、音楽は次第に高揚を見せていく。マケラ率いるオーケストラとの絶妙な駆け引きも聴きもの。プロコフィエフの高貴なたたずまいを湛えた音楽もこのヴァイオリニストならでは。

チャイコフスキー:組曲《白鳥の湖》、シチェドリン:カルメン組曲

チャイコフスキー:組曲《白鳥の湖》、
シチェドリン:カルメン組曲

ミハイル・プレトニョフ(指揮)
ラフマニノフ国際管弦楽団
(キングインターナショナル) KKC6855/6 6000円
※EuroArts原盤(2CD)

自ら創設したラフマニノフ国際管弦楽団との初録音
プレトニョフの鮮やかな切り口が光る

 反プーチンの姿勢を明らかにしていたプレトニョフは、2022年よりスイスに居を構える。その年にスロヴァキアのブラチスラヴァにラフマニノフ国際管弦楽団を創設し、故国を離れざるを得なくなったロシア・ナショナル管弦楽団の楽員やウクライナやオーストリアのメンバーとともに新たな活動に入った。初録音がこの2枚組である。組曲《白鳥の湖》、《カルメン》の世界を再構築したシチェドリンの2作はいずれも鮮やかな切り口が印象的。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(全6曲)

イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(全6曲)

セルゲイ・ハチャトリャン(ヴァイオリン)
(キングインターナショナル)KKC6846 3300円 ※Naive原盤

イザイ自身が愛用したヴァイオリンで演奏
天才的技巧に、魂震える弦の響き

 アルメニア出身のセルゲイ・ハチャトリャンが、イザイ自身が愛奏していた1740年製グァルネリ・デル・ジェス「イザイ」を使用してイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全6曲を録音。シゲティ、ティボー、エネスコ、クライスラーらに捧げられた作品の個性を存分に生かし、天才的な技巧を駆使して圧倒的な存在感を放つ演奏を披露。深く熱く魂が震えるような弦の響きは心の奥に響く。ハチャトリャンの魔力に惹かれ、何度も聴いてしまう。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ブゾーニ:歌劇《ドクトル・ファウスト》

ブゾーニ:歌劇《ドクトル・ファウスト》

ディートリヒ・ヘンシェル(ドクトル・ファウスト)、
ダニエル・ブレンナ(メフィストフェレス)、
オルガ・べスメルトナ(パルマ公爵夫人)、ほか
コルネリウス・マイスター(指揮)フィレンツェ五月祭管弦楽団&合唱団
ダヴィデ・リヴェルモーレ(演出)
(ナクソス)NYDX50350 5500円 ※DYNAMIC原盤、日本語字幕・解説付き

今年で没後100年となるブゾーニの歌劇
未完の作品を、巧みな演出で幻想的雰囲気に

 2024年はブゾーニの没後100年だという。これは23年にフィレンツェ五月祭で上演された舞台(ヤルナッハによる補作版)。イタリアで人気最高の演出家、リヴェルモーレは難解で知られるこの未完の作品を、ブゾーニ自身の人生の葛藤と重ね合わせて、幻想的で不気味な雰囲気の舞台に創りあげた。ヘンシェル演じるファウスト博士はブゾーニそっくりで、数々の魔法や魔術の場面は大胆にCGを使い、壮大な空間が出現する。マイスターの指揮も先鋭的でドラマチック。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

シュニトケ:ピアノと弦楽合奏のための協奏曲

シュニトケ:ピアノと弦楽合奏のための協奏曲

ヒンデミット:交響曲《画家マティス》/
主題と変奏《4つの気質》
アンナ・ゴウラリ(ピアノ),マルクス・ポシュナー(指揮)、
スイス・イタリアーナ管弦楽団
(ECM)4875453

響きのみずみずしさ強調したシュニトケ
雄弁にピアノと管弦楽が絡み合うヒンデミット

 シュニトケのピアノ協奏曲といえば、かつてのロジェストヴェンスキー&ポストニコワの怒りと痛みが突き刺さる演奏が印象的だった。耳馴染(なじ)みいい和音とクラスターが並び、コントラストを際立てるこの曲をゴウラリは穏やかに溶け合わせ、その響きのみずみずしさを強調する。最近はブルックナー・チクルスに精を出すポシュナーの指揮も、
どこか優雅。《4つの気質》では雄弁にピアノと管弦楽が絡み合うことで、音楽の綾を解きほぐす。