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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブルックナー: 交響曲第8番

ショスタコーヴィチ:交響曲 第10番

サントゥ=マティアス・ロウヴァリ(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団
(東京エムプラス) XSIGCD889
3300円 Signum Uk原盤

ロウヴァリが名門オケに自らの個性を浸透
オリジナルな解釈で曲の全貌明らかに

 サントゥ=マティアス・ロウヴァリが フィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者に就任して2年目の2024年の収録。北欧出身の指揮者の台頭が著しいなか、ロウヴァリも目が離せないひとりだ。フィルハーモニア管は高い能力を持つプロフェッショナル集団として知られる。そうしたオーケストラを完全に把握し、確固とした自らの個性を浸透しつつある。誰の模倣でもない彼自身の解釈で、ショスタコーヴィチの代表作の全貌をあきらかにしている。

モーツァルト:交響曲 第39番、第40番、第41番《ジュピター》

マーラー:交響曲 第1番《巨人》

小林研一郎(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(オクタヴィア) OVCL-00858
4514円

円熟の年輪重ねた小林
名門オーケストラの能力巧みに活かす

 小林研一郎はダイナミックな表現、ひたすら突き進むようなエネルギーが特徴的な指揮者だったが、反面、精妙な表現や抒情性という点ではやや物足りないところも。「炎のコバケン」というニックネームは、彼の長所と短所をともに表すものだった。しかし、円熟の年輪を重ねた近年の彼は違う。このロンドン・フィルによる最新セッションでも、自らの持ち味も活かしながら、名門オーケストラの能力を巧みに活かした音楽を聴かせている。

室内楽&器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

バッハ/ネヴァーマインド 《ゴルトベルク変奏曲》

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第13番&第18番

内田光子(ピアノ)
(東京エムプラス)SMGAL3084 3500円 ※Obsession原盤

20代の頃の名ピアニストが奏でた
新鮮でひたむきなモーツァルト

 内田光子のモーツァルトは1980年代のソナタと協奏曲のチクルスの名盤で知られているが、初CD化となる1974年の録音がお目見え。20代の内田が奏でる若々しくテンポが速めのモーツァルトは、のちの深みと内省的な味わいと濃密な感情を秘めた演奏とは異なり、新鮮でひたむきでモーツァルトの天才性を楽しんでいるかのよう。第13番の緩徐楽章のたゆたうような表情、第18番の繊細さとエレガンスの表現などがまっすぐ心に響く。

リスト 《十字架の道行》&ピアノ曲

リスト 《十字架の道行》&ピアノ曲

●リスト:《十字架の道行》(全15曲)/
《コンソレーション》(全6曲)、ほか全23曲
レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)
グレーテ・ぺーデシェン(指揮)ノルウェー・ソリスト合唱団
(ソニー)SICC30906 2970円

イエスの受難を描いた
ピアノ独奏付き大合唱曲に挑戦

 アンスネスが、リストが最晩年に心血を注いだピアノ独奏付きの大作合唱曲《十字架の道行》を録音。これはヨーロッパの教会に古くから見られる絵画で、イエスの受難を14の場面で描いたもので、リストは絵画を音で表現した宗教音楽を作曲。ノルウェーの女性指揮者&合唱団との共演で、アンスネスはリストの描き出した情景に寄り添うよう、視覚的な演奏を展開。人間の苦悩、神秘、魂などの表現を圧巻の合唱とともにリアルに描き出す。

オペラ& 声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

リュリ:抒情悲劇《アルセスト、またはアルシードの勝利》

リュリ:抒情悲劇《アルセスト、またはアルシードの勝利》

ヴェロニク・ジャンス(アルセスト)、
ネイサン・バーグ(アルシード)、ほか
ステファーヌ・フュジェ(指揮)
レゼポペー(古楽器使用)&ヴェルサイユ王室歌劇場合唱団
(ナクソス)CVS149 オープン価格
※3CD、輸入盤、Chateaux de Versaille原盤

古雅な響きで繰り広げられる
典雅で荘厳な愛の叙事詩

 フランス・バロックの名作《アルセスト》は、5幕から成る古代ギリシャの物語。アドメート王を助けるため、自分の命を差し出す王妃アルセスト。その愛の深さに打たれ、自らの恋を諦めて身を引く英雄アルシードの苦悩が描かれる。2024年にヴェルサイユ宮殿で収録されたのは、フュジェが率いる古楽器集団レゼポペーの演奏。アンサンブルの古雅な響きにのせて、ジャンス、オヴィティ、バーグなどの名歌手が壮大なスケールで、典雅で荘厳な愛の叙事詩を繰り広げる。