岡本稔◎音楽評論家

ルドルフ・ケンペ(指揮)、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
(ワーナー)WPCS-28518
5500円
※SACD Hybrid、2枚組
ケンペ/ミュンヘン・フィルの到達水準示す極上の1枚
ケンペが音楽監総督をつとめた時代のミュンヘン・フィルの到達水準の高さを強烈に印象付ける録音だ。アンサンブルの精度は緻密で南ドイツならではの暖かみのある弦楽器群に洗練された音色の管楽器が和し、極上の響きを作り出す。緩急自在の棒さばきによって、ミュンヘンの生んだ大作曲家の作品の魅力を余すところなく明らかにしている。まさに楽員たちの作曲家への傾倒の念が一つに合わさった感がある。半世紀以上前の録音だが、音質も良好だ。

ラハフ・シャニ(指揮)、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
(ワーナー)WPCS-13893
3410円
※SACD Hybrid
シャニの棒が定番の名曲から新鮮な味わい引き出す
先のミュンヘン・フィルとの来日でも実力の大きさを明らかにした感があるシャニだが、こちらは2018年から首席指揮者をつとめるロッテルダム・フィルとの新譜。ピアストとしても卓越した腕をもつ30歳代の俊英は、ここでも高い音楽性を披露している。《新世界より》でも広く知れ渡った名曲からきわめて新鮮でみずみずしい味わいを引き出す。オランダの作曲家ワーヘナールでは、知名度の低い作曲家の曲の魅力を明らかにしている。
伊熊よし子◎音楽評論家

シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番第2楽章/チャイコフスキー:《四季》より〈舟歌〉、〈秋の歌〉/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ/ショパン:ノクターン第1、2、5、13番、バラード第1番、マズルカ第13、17、31、41番 ほか
ダン・タイ・ソン(ピアノ)
(ビクター)VICC-60969
3500円
※2CD
巨匠の歩みを投影したベストアルバム
ショパン・コンクールの優勝者ブルース・リウ、エリック・ルーの恩師であり、ピアニストとしてはいまや巨匠の域に達しているダン・タイ・ソンが、長年にわたり録音してきた作品を「ダン・タイ・ソン選曲」「ショパン名曲集」の2枚にまとめリリース。CDにはピアニストとして、人間としての生き方が投影され、成長の過程が映し出されて興味深い。冒頭のシューベルトのピアノ・ソナタ第21番第2楽章では作曲家晩年の心境に近づき、静謐で喪失感に富む曲想に迫るピアニズムを披露。得意なショパンのマズルカでは特有の間とルバートが秀逸。
石戸谷結子◎音楽評論家

アンバー・ブレイド(ソプラノ)、ジョン・オズボーン(テノール)、ジェラール・シュナイダー(テノール)、モニカ・ブツコフスカ(ソプラノ) ほか
ヘンリク・ナナシ(指揮)、フランクフルト歌劇場管弦楽団&合唱団
(ナクソス)NYDX-50438
5500円
※BD、輸入盤国内仕様、日本語字幕・解説付き
現代に通じる社会問題を軽やかに突きつける
オペルンヴェルト誌の最優秀賞で有名なフランクフルト歌劇場の話題作。ユダヤ人を真っ向から取り上げた重いテーマに挑んだのは、T・ギュルバカ。来年はノルウェーで「指環」全曲の演出が発表されている気鋭の演出家だ。現代に設定し、時折ユーモラスなシーンを入れて舞台に“軽さ”を吹き込みながら、宗教対立や民族迫害といった、まさに今の世界の大問題を聴衆に突きつける。ナナシの指揮もテンポが速く、一気に聴かせる。エレアザール役のオズボーン、ラシェル役のブレイド、サミュエル役のシュナイダーと歌手が揃い、圧倒的な感動を与える名演だ。
鈴木淳史◎音楽評論家

ライヒ:六重奏曲、二重六重奏曲、6台のマリンバ、ダンス・パターンズ
コリン・カリー・グループ
(Colin Currie Records)CCR0009
※SACD Hybrid
オープン価格
ミニマル音楽の実験的な精神と生命力を両立
90歳の年を迎えてもその創作が旺盛なライヒ。約40年前に書かれた《六重奏曲》(ライヒの創作のなかで頂点に値する作品の1つ)は録音も少なくないが、ついに大本命の打楽器グループによる新譜が出た。各打楽器の響きのコントロールがすばらしく、声部のバランスも精緻にして大胆だ。終楽章でのピアノ・パートが埋もれることなく、愉悦的なまでに他のパートとリズムを交わし合うのも素敵。ミニマル音楽のもつ実験的な精神と生命力を両立させた。