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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

ウラディーミル・フェドセーエフ(指揮)
チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ
(AVEX)AVCL-84114 3300 円

激動の時代を経て、より洗練された味わいが感じられる

 旧ソ連時代から、40年以上も名門の芸術監督・首席指揮者をつとめてきたフェドセーエフの近況を伝える1枚。モスクワ放送響と称していた時代から、彼の音楽はいわゆるロシアの指揮者による土のにおいを強く感じさせるものではなかったが、激動の時代を経て、このチャイコフスキーからはより洗練された味わいが感じられるようになった印象がある。適度に民族的な色合いを表出させながらも、精緻で知的で、現代的な特徴も併せ持つ演奏だ。

パリ ヒラリー・ハーン

パリ ヒラリー・ハーン

●ショーソン:詩曲●プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
●ラウタヴァーラ:2つのセレナード(ハーンのために)
ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)
ミッコ・フランク(指揮)
フランス国立フィル
(ユニバーサル)UCCG-45003 3080円

ハーンの柔軟かつ繊細な感性が珠玉の輝きを放つ

 ハーンにとって、「詩曲」もプロコフィエフも初の録音。アルバムの「パリ」は収録された3曲がいずれもこの都市に縁が深いことによる。文字通り詩的な情感が充いつするショーソンでは、ハーンの柔軟かつ繊細な感性が珠玉の輝きを放つよう。パリで初演されたプロコフィエフの協奏曲でも、そうした彼女の研ぎ澄まされた感覚が何より聴きものになっている。細やかな表情の変化に魅了される。彼女のために書かれたラウタヴァーラ作品も秀逸だ。

ブラームス:交響曲第1番&第4番、ドビュッシー:交響詩「海」

ブラームス:交響曲第1番&第4番、ドビュッシー:交響詩「海」

シャルル・ミュンシュ(指揮、ブラームス:交響曲第1番)
ジャン・マルティノン(指揮)
フランス国立管
(キングインターナショナル)CDSMBA-065 オープン価格(2CD)

指揮者の息遣いが生に伝わってくるようなブラームス

 ミュンシュは、1966年の来日の際の東京文化会館におけるライヴ。この曲を十八番にしていただけに、堅固な造形に生特有の高揚感が充いつ するブラームスとなっている。フランス国立視聴覚研究所提供による音源は良好で、指揮者の息遣いが生に伝わってくるようだ。マルティノンは1970/71年のパリにおけるライヴ。ドビュッシーの「海」はもちろん期待通りの秀逸なものだが、彼には珍しいブラームスの第4番も作品の本質を鋭くとらえた演奏である。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

エルガー:ヴァイオリン協奏曲&ヴァイオリン・ソナタ

エルガー:ヴァイオリン協奏曲&ヴァイオリン・ソナタ

ルノー・カピュソン(ヴァイオリン)サイモン・ラトル(指揮)
ロンドン交響楽団
スティーヴン・ハフ(ピアノ)
(ワーナー)0190295112820 オープン価格

英国的な要素に肉薄し、強い印象をもたらす

 エルガーのヴァイオリン協奏曲とヴァイオリン・ソナタは、現在あまり演奏される機会に恵まれていない。これらの作品に情熱と敬愛と冒険心と探求心をもって挑んだカピュソン、ラトル& ロンドン響、ハフは作品が内包する英国的な要素に肉薄、強い印象をもたらす名演を繰り広げている。協奏曲は1910年にロンドン響とクライスラーのソロで初演された、このオーケストラゆかりの作品。ソナタとともにカピュソンの美音が際立ち、心に染み入る。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

ヤナーチェク:ピアノ作品集

ヤナーチェク:ピアノ作品集

●ヤナーチェク:ピアノ・ソナタ 「1905年10月1日、街頭にて」/霧の中で/
「草陰の小径にて」第1&2 集
ラルス・フォークト(ピアノ)
(Ondine)ODE-1382 オープン価格

クリアなピアニズムがエモーショナルさを引き立てる

 フォークトの持ち味は、つねに1音1音をクリアに弾くことで、音価や強弱を明確に示すこと。作品によっては、冷ややかでカチッとしすぎな印象も与えがちだが、ヤナーチェクの音楽ではそれが逆にエモーショナルな面を引き立てる。速度や拍子の急激な変化が顕著なヤナーチェク作品。それらを滑らかに繋げて目立たなくするのではなく、くっきり鮮やかに強調することで、作品内部から沸き上がる多様でデリケートな感情を沸き上がらせる。