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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

フルトヴェングラー/ベルリン・フィル
ドイツ帝国放送局1939~1945

フルトヴェングラー/ベルリン・フィル

●ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱つき」、
ブラームス:交響曲第4番、ブルックナー:交響曲第9番、他
ウィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、他
(ベルリン・フィルメディア/キングインタ-ナショナル)
KKC-5952 35000円
(22 SACDハイブリッド+DVD)

ソ連によって接収されていた録音が高音質で蘇る

 戦時中にドイツ帝国放送が収録したベルリン・フィルとフルトヴェングラーによる放送録音を最良のサンプリングを行い、22枚のCDに集大成。ソ連によって接収されていたテープに基づく。初出音源、ラヴェル「ダフニスとクロエ」第1組曲の2曲、シューベルトの交響曲第7番「未完成」の第2楽章も含む。当時の録音としては驚くほどの高音質で、フルトヴェングラーが極めて厳しい状況下で表現する鬼気迫るばかりの演奏はまさに手を握るばかりだ。

ウィーン・フィル:ニューイヤー・コンサート2019

ウィーン・フィル:ニューイヤー・コンサート2019

●ヨーゼフ・シュトラウス:「天体の音楽」/「トランスアクツィオネン」
●ヨハン・シュトラウス2世:「芸術家の生涯」/「美しく青きドナウ」
●ツィーラー:シェーンフェルト行進曲、他
クリスティアン・ティーレマン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-2155/6(2CD) 3132円
録音:2019年1月1日(ライヴ)

細部まで徹底的に作り込まれた異色のウィーン音楽

 ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートにティーレマンが招(へいされるとは意外な人選だった。ワーグナーを中心にしたレパートリーで高い評価を確立しているこの指揮者が振るウィーンの音楽はかなりユニークなもの。オーケストラに音楽の流れをゆだねることなく、細部まで徹底的に作り込む。その結果生まれるのは優美で軽妙な娯楽音楽ではなく、リヒャルト・シュトラウスを想わせる緻密な独自の説得力を持つものだ。異色のウィーン音楽として注目。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

モーツァルト、ベートーヴェン:ピアノと管楽器のための五重奏曲

モーツァルト、ベートーヴェン:ピアノと管楽器のための五重奏曲
アンサンブル・ディアーロギ

アンサンブル・ディアーロギ
(キングインターナショナル/ハルモニア・ムンディ)
KKC-5976 3240円

情熱と躍動感に満ちたピリオド楽器のアンサンブル

 まるでごく近くで演奏を聴いているような、臨場感あふれる演奏だ。アンサンブル・ディアーロギはピリオド・オーケストラで活躍するクラリネット、ナチュラル・ホルン、オーボエ、バスーンとフォルテピアノの名手によるアンサンブル。20代のモーツァルトとベートーヴェンが書いたピアノと管楽器のための五重奏曲というこの録音は活力と情熱と躍動感に満ち、「音楽の力」をもらえる。野心あふれる若き作曲家の意欲作に、心が揺さぶられる感じ。

ショパン:ピアノ・ソナタ第3番、子守歌、夜想曲作品55、マズルカ作品56

ショパン:ピアノ・ソナタ第3番、子守歌、夜想曲作品55、マズルカ作品56

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1827 3024円

ゆっくり静かにひたひたと胸の奥に染み込む「子守歌」

 ポリーニの初来日の演奏に強い衝撃を受けてから、何年(ったのだろうか。いまだあのときの演奏は深い記憶となって心に刻み込まれている。ここに登場したショパン晩年の作品は、まさに熟成された味わい深い演奏。ほとんどが再録音だから、以前の録音と聴き比べるのも楽しみのひとつ。とりわけ「子守歌」が滋味豊かなピアニズムで、ゆっくり静かにひたひたと胸の奥に染み込んでくる。テンポとルバートと絶妙のペダリングが聴きどころだ。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

ベルリオーズ:イタリアのハロルド

ベルリオーズ:イタリアのハロルド

●ベルリオーズ:歌曲集「夏の夜」
タベア・ツィンマーマン(ヴィオラ)
ステファヌ・ドゥグー(バリトン)
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
レ・シエクル
(Harmonia Mundi France)HMM-902634 オープン価格

従来のベルリオーズ像を変えてしまうような新鮮さ

 没後150年。従来のベルリオーズ像を変えてしまうような新鮮な演奏だ。「イタリアのハロルド」では、ヴィオラ独奏もピリオド楽器のオーケストラも、細やかに表現を移ろわせ、各場面にふさわしい表情を与えつつ、えも言われぬメランコリーさを醸成、作品の姿をみずみずしく浮かび上がらせた。歌曲集「夏の夜」は、珍しくもバリトン歌手が1人で通す。独得な甘やかさがあるドゥグーの歌唱が、オーケストラの響きと溶け合って、心に染み入る。