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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ニューイヤー・コンサート2020

ニューイヤー・コンサート2020

●ツィーラー:オペレッタ「放浪者」序曲●ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「愛の挨拶」/「リヒテンシュタイン行進曲」●ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ「花祭り」/ワルツ「シトロンの花咲く国」●スッペ:オペレッタ「軽騎兵」序曲、他
アンドリス・ネルソンス(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-2157/8 3190円(2CD)

飛ぶ鳥を落とす勢いの俊英が曲の味わいを的確に

 ネルソンスはボストン、ゲヴァントハウスの2つの名門を率い、ウィーン・フィルともベートーヴェン交響曲全集をはじめとするプロジェクトで共同作業を行うなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの俊英。ニューイヤー・コンサート初登場である。同コンサートで初めて取り上げる曲が9曲といささか奇をてらいすぎの感もあるが、曲の味わいを的確に表現するのはさすが。アンコールの「ドナウ」のオーケストラの自発性を活かす指揮にも好感が持てる。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集

●ベートーヴェン:ソナタ第8番「悲愴」/ソナタ第12番「葬送」/ソナタ第14番「月光」/ソナタ第23番「熱情」/ソナタ第32番
ミシェル・ダルベルト(ピアノ)
(La Dolce Volta)LDV-78 オープン価格(2CD)

熟成された上質なワインのようなベートーヴェン

 ミシェル・ダルベルトがベートーヴェンの記念の年にリリースしたソナタ選集は、鮮烈で穏やかで作品の奥義を極めたピアニズム。ひとつひとつのソナタがあるべき姿で存在し、ベートーヴェンの美の世界を絵巻物のように鮮やかに披露する。これらを耳にすると全32曲を無性に聴きたくなるのは私だけではないだろう。ダルベルトの熟成された上質なワインのようなベートーヴェンは、聴き手を作品の深い部分へと近づけ、感動の泉を満たす。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」

ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」

クリスタ・ルートヴィヒ(レオノーレ) ヨゼフ・グラインドル(ロッコ) ジェイムズ・キング(フロレスタン) グスタフ・ナイトリンガー(ピツァロ)、ほか カール・ベーム(指揮) ベルリン・ドイツ・オペラ管&合唱団 (キングインターナショナル)KKC-2511/12 オープン価格 ※輸入盤

オペラ史の金字塔となったベルリン・ドイツ・オペラ来日公演

 1963年日生劇場のこけら落とし公演として招聘しょうへいされたベルリン・ドイツ・オペラ。ベームの指揮、ゼルナーの演出、当時の最高の歌手が勢揃いしたこの舞台は、日本のオペラ界の歴史に残る金字塔として語り継がれる。「レオノーレ第3番」の圧倒的な迫力とパワフルなベームの指揮は感動的。1幕の4重唱の美しさ、2幕のキングが歌う々しいフロレスタンのアリア、パワーあるルートヴィヒのレオノーレなど客席の熱気が伝わる。ブックレットの資料も読み応えある。

現代曲

長木誠司◎音楽評論家

ペーター・エトヴェシュ:歌劇《三人姉妹》全曲

ペーター・エトヴェシュ:歌劇《三人姉妹》全曲

原作:チェーホフ 
レイ・チェネス、デイヴィッド・DQ・リー、ドミートリー・エゴロフ(以上カウンターテナー)
ニコライ・ペテルセン(指揮)
デニス・ラッセル・デイヴィス(指揮)
フランクフルト歌劇場管弦楽団、他
(Oehms)OC-986 オープン価格(2CD)

オペラ化された「3人姉妹」は全てカウンターテナー

意欲的で知られるフランクフルト歌劇場による2018年新制作のライヴ。チェーホフの原作をハンガリーの作曲家・指揮者のエトヴェシュがオペラ化して、かつてリヨンで初演したもの。演出でも話題になった舞台ではあるものの、音だけでも十分に上演の高水準が聴き取れる。3人の姉妹がすべてカウンターテナーで歌われるジェンダー攪乱かくらん的な構想が魅力的だが、総勢13名の歌手の好演をデイヴィスとペテルセンふたりの指揮者が支える。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

シューベルト:スターバト・マーテル/交響曲第7番「未完成」

シューベルト:スターバト・マーテル/交響曲第7番「未完成」

シューマン:ミサ曲「ミサ・サクラ」 トーマス・ヘンゲルブロック(指揮)
バルタザール=ノイマン・アンサンブル&合唱団 アーグネシュ・コヴァーチ(ソプラノ)
ミルコ・ルートヴィヒ(テノール)
ライモンズ・シュポーギス(バリトン)
(DHM)88985417492 オープン価格

「未完成」を中心に、大きな宇宙が形作られる

 「未完成」交響曲は、いかなる音楽と組み合わせるとしっくりくるのか。多くのアイディアがあるが、さすがヘンゲルブロックは一味違う。冒頭に、シューベルト18歳の宗教曲を置く。これが次の「未完成」と同じ方向性で、すんなり名曲を導く。細やかな陰影に彩られた演奏も絶品。しなやかなフォルムのなかに、力強さも潜ませ。最後はシューマン晩年のミサ曲というのも意外だが、それもじわじわグラデーション状に一つの流れに溶け込んでいく。