新譜CD&DVD一覧

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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ニューイヤー・コンサート2022

ニューイヤー・コンサート2022

●ヨーゼフ・シュトラウス:フェニックス行進曲/ポルカ・マズルカ「海の精セイレーン」●ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「フェニックスの羽ばたき」/ワルツ「美しく青きドナウ」●ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲 、他
ダニエル・バレンボイム(指揮)ウィーン・フィル
(ソニー)SICC2236/7 3190円(2CD)

卓越したタクトさばきにより含蓄に富んだ演奏

 恒例のイヴェントのライヴ。今年、80歳になるバレンボイムがこの演奏会を指揮するのは3回目。1965年にピアニストとして共演して以来、共演機会は数多く、深い絆で結ばれている。ここに収録された録音を聴いても、それは実感される。耳になじんだ名曲の比率は少なめで、初登場の曲も3つを数える。そうした作品でも、卓越したタクトさばきにより含蓄に富んだ演奏を聴かせている。そこでもオーケストラの優美な持ち味を損ねることない。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」、サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」、ブラームス:交響曲第2番、ムソルグスキー:「展覧会の絵」

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」、サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」、ブラームス:交響曲第2番、ムソルグスキー:「展覧会の絵」

ジャン・マルティノン(指揮)フランス国立放送管、他
(キングインターナショナル)CDSMBA-081 オープン価格(2CD)

マルティノン特有の明晰な表現が貫かれる

 マルティノンがフランス国立放送管の首席指揮者をつとめた時期の録音。放送管ならではの高い機能性を駆使して、水準の高い演奏を聴かせる。ブラームスの交響曲第2番では、極めてゆっくりとした音楽の歩みに驚かされるが、慣れるにつれて含蓄に富んだ表現に魅せられていく。ムソルグスキーでは、管の名手たちの技も聴きもの。どの演奏でもこの指揮者特有の明晰な表現が貫かれている。パレー指揮のサン=サーンスの交響曲第3番を併録。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

オン・アーリー・ミュージック

オン・アーリー・ミュージック

●トリスターノ:トッカータ/ジョン・ブルのニ調のガリヤルドによって
●ピーター・フィリップス:ニ調のファンタジア
● ジョン・ブル:清き心もて称えん●フレスコバルディ:アリア「ラ・フォリア」●ギボンズ:パヴァン、他
フランチェスコ・トリスターノ(ピアノ)
(ソニー)SICC-30594 2860円

晴れやかで爽快感に満ちた凛とした演奏

 ジャンルの壁をかろやかに飛び越え、自作も含めて新譜を発表するたびに新たな世界へと挑戦する姿勢を見せているフランチェスコ・トリスターノ。今回は自身が魅了されているフレスコバルディ、ギボンズ、ブルというルネサンス/初期バロック作品にトリスターノの即興性を交えるなどの創意工夫を施した録音が完成。解説に「古楽には早朝の日の出のような修復力がある」とつづり、まさに晴れやかで爽快感に満ちたりんとした演奏を披露している。

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲)

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲)

諏訪内晶子(ヴァイオリン)
(ユニバーサル)UCGD-9086/7 5800円(2SACDハイブリッド)

新たな楽器で作品の奥へと聴き手を誘う

 弦楽器奏者にとって新たな楽器との出会いは刺激的であり、挑戦にもつながり、ひとつの転換期を迎えることになる。諏訪内晶子にとって1732年製グァルネリ・デル・ジェズ「チャールズ・リード」との出会いは、まさに運命的なもの。その名器でCDデビュー25周年を記念して収録したバッハは、彼女の「いま」の充実を刻印する記念碑的録音。艶やかで倍音が豊かで芳醇な響きを備えた楽器でバッハと真に対、作品の奥へと聴き手を誘う。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

コンテンポラリーなウクレレ

コンテンポラリーなウクレレ

●ナスターリ:ディエス・レインボー●バルベリス:変奏曲風序曲
●タマーロ:メッセンジャー●ベッジョ:オブスキュレ・パルティクレス
●ロッレ:アフターワード●ドゥボン:レアリティーズ・エッジほか
ジョヴァンニ・アルビーニ(ウクレレ)
(Da Vinci Classics)C-00506 オープン価格

その楽天的な響きが現代曲を閉塞性から解き放つ

 ウクレレといえば、ハワイアンのイメージからどうしても離れられない楽器。そんな楽器のために書かれた現代曲ばかりを集めた貴重なアルバムだ。ウクレレらしさを前面に出す曲もあれば、ギター顔負けの早弾きを要求されるものもあり、なかには音列技法を用いたり、特殊奏法の響きとエレクトロニクスを重ねたり。スタイルはさまざまではあるものの、いずれの曲もその楽天的な印象を残す響きゆえ、閉塞した感じがまるでしないのがいい。