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vol.80 メゾ・ソプラノ 山下裕賀

メゾ・ソプラノ 山下裕賀

「ヘンゼルとグレーテル」のヘンゼルを歌う
6月のNISSAY OPERA、日生劇場で公演
「大人が聴いても深みのある音楽です」

 「ヘンゼル役のオーディションに合格したときはうれしさとともに驚きました。間違って電話がかかってきたのではないか、としばらく周りにもあまり話しませんでした」とオーディションに受かった1年前のことを話す。
 立川市民オペラの「カルメン」で、カルメンの友人メルセデスなどを歌った経験はあるが、オーディションを受けたのは「ヘンゼルとグレーテル」で2つ目。まだ東京芸大大学院に在学中で、外部のオペラ公演の主役は初めてというフレッシュな歌い手。
 「私の先生である伊原直子先生が魔女を歌っている録音を聴き、この作品が大好きになりました。魔女役もやってみたかったのですが、私の声をより活かせるのはヘンゼルだな、と思ったのです。やるしかない、と悔いの残らないオーディションでした」
 「ヘンゼルとグレーテル」は1893年、ドイツ・ワイマールで初演された。初演の指揮はリヒャルト・シュトラウス。作曲者のフンパーディンクは、バイロイトにおいてワーグナーの下で働くなどしており、この作品にもワーグナーの影響が感じられる。
 「『ヘンゼルとグレーテル』は、何となく明るく楽しい音楽と想像するかもしれませんが、オーケストラは重厚で、楽しいだけでなく、美しく、繊細な旋律が流れます。大人が聴いても深みのある音楽は、とても素敵です」
 今回は、高校生などを対象にした公演もあるため、日本語に翻訳された歌詞を歌う。日本語の字幕も出て、観客の理解を促す。

モーツァルト「フィガロの結婚」のケルビーノを歌う
モーツァルト「フィガロの結婚」のケルビーノを歌う

 「日本語でオペラをやるのは賛成です。言葉を聴いて、オペラを楽しんでほしい。『注文の多い料理店』という日本語の新作オペラを歌ったこともあります。今度の作品は練習をしていて、日本語のために書かれた作品ではない、とは思います。日本語で歌うと、言葉のニュアンスが難しいのですが、一番いい場所で声を出せるようにしたい」
 母親は中学の音楽の先生。小さいときからピアノは習っていたが、歌と出合ったのは高校2年のとき。東京芸大の文化祭に行き、「音楽にあふれた環境が新鮮」と感激し、歌の道に進んだ。
 「ヘンゼルはちょっと抜けたところがありますが、妹のことが大好きです。やんちゃで腕白、食いしん坊です。自分に通じるものがありますし、彼の気持ちが分かります。いたずらをしてお母さんに怒られるなど、かわいい役です。貧乏暮らしの中にも楽しさがあります。音楽とともに表情がころころと変わっていきます。そんな表情を見てほしい。伸び伸びと歌って全身で表現したいと思います」

Hiroka Yamashita

京都府出身。東京芸術大学音楽学部声楽科卒業(卒業時に同声会賞を受賞)。同大学院音楽研究科修士課程オペラ専攻修了(アカンサス音楽賞を受賞)。現在、同大学院博士課程オペラ専攻に在籍中。藤花優子、伊原直子、菅英三子に師事。第23回友愛ドイツ歌曲コンクール学生の部奨励賞受賞。第21回コンセール・マロニエ21 第1位。モーツァルト「フィガロの結婚」ケルビーノ、ビゼー「カルメン」メルセデスで出演。第64回「芸大メサイア」、 モーツァルト「レクイエム」「戴冠ミサ」、ベートーヴェン「第九」などにおいてソリストを務める。

ここで聴く

NISSAY OPERA 2019「ヘンゼルとグレーテル」
日本語訳詞上演、日本語字幕付
6月15日(土)、16日(日) 各日13:30 日生劇場

作曲:フンパーディンク  指揮:角田鋼亮
演出・振付:広崎うらん  新日本フィル
          15日     16日
ヘンゼル     郷家暁子   山下裕賀
グレーテル    小林沙羅   鵜木絵里
父        池田真己   小林大祐
母        藤井麻美   八木寿子
魔女       角田和弘   伊藤達人
眠りの精・露の精 宮地江奈   照屋篤紀
■問い合わせ:日生劇場 電話03-3503-3111