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vol.5 メゾ・ソプラノ 向野由美子

メゾ・ソプラノ 向野由美子

日生劇場ファミリーフェスティヴァル2013
オペラ「ヘンゼルとグレーテル」のヘンゼル役
「子供たちにオペラの世界に入ってきてほしい」

「以前、約30分に短くした『ヘンゼルとグレーテル』で全国各地の学校を回り、たくさん公演しました。はじめは子供向けのオペラ、と思っていました。いざ、歌うことになって勉強しはじめたら、メロディー・ラインの美しさに魅了されました。何回聴いても飽きません。大人の心の中にもすっと入ってきます」
日生劇場恒例のファミリーフェスティヴァルのオペラ公演「ヘンゼルとグレーテル」でヘンゼルを歌う。グリム童話をもとにドイツのフンパーディンクが作曲、1893年に初演された。ヘンゼルは男の子だがメゾ・ソプラノが歌う。
「最後に魔女にとらわれていた子供たちが戻り、夢の中で見た天使達が僕達を守ってくれた、と歌うシーンがあります。ここは歌っていても泣けてしまいます。大人になってもメルヘンが必要なのだと思いました。演じるときは、心の底から自分は子供だと意識しなければいけません。10歳の姪っ子、7歳の甥っ子の日常を観察しています。子供はいつも何かに興味津々です」

メゾ・ソプラノ 向野由美子

演出の広崎うらんはダンス畑の出身。歌手もかなり激しい動きを要求される。
「うらんさんは一回固まったものを打ち壊していくタイプの演出家です。なれなくちゃいけない部分となれてはいけない部分がある、常に新鮮であること、とおっしゃっていました。最初にやらされたのが、何かの動物になりなさい、です。開き直って猫をやりました。4時間の稽古のうち1時間は入念なストレッチです。こんなことは初めてです。半月、稽古をしていますが、まだ動きは固まっていません。オペラの世界の人ではない視点から、これまでスルーしてきた疑問点を一つ一つ解決しながら進めています」
こんな話を聞くと、本番が何とも楽しみになる。装置はオーソドックスなものだが、現在の時点では、時代背景は少し近未来的なものになりそうという。田中信昭訳の日本語上演で、子供たちにも分かりやすい。
「学校公演のときも子供たちの反応はとてもよかったです。絵本などでお話は知っています。子供たちにとって魔女が出てくるのがインパクトがあります。怖い魔女を退治するところに共感してくれるようです。子供たちにオペラの世界に入ってきてほしい。舞台と客席の隔たりをなくしたいと思っています」
11月は東京文化会館で、「カルメン」を演じる。来年11月には日生劇場で、アルゼンチンの作曲家ゴリホフの「アイナダマール(涙の泉)」日本初演に出演する。
「ユーチューブで見て鳥肌が立ちました。日本で上演することが革命的です。素晴らしいチャンスをいただきました」

Yumiko Kohno

東京都出身。東京芸術大学卒業、同大学院修了。三林輝夫、大国和子に師事。1998年、東京オペラ・プロデュース「ベアトリースとベネディクト」ユルジュールでオペラ・デビュー。2000年、新国立劇場小劇場オペラ・シリーズに「オペラの稽古」伯爵夫人でデビュー。02年、大田区民オペラ「ナブッコ」フェネーナ。05年、「ラ・チェネレントラ」ティスベ役で藤原歌劇団デビュー。10年、「カルメル会修道女の対話」マティルド修道女、12年、「フィガロの結婚」ケルビーノなどを演じる。藤原歌劇団団員。

ここで聴く

日生劇場開場50周年記念公演
ファミリーフェスティヴァル2013
家族で楽しむオペラ
フンパーディンク作曲
「ヘンゼルとグレーテル」
8月10日(土)、11日(日) 日生劇場
各日11時、15時開演
11時の部
向野由美子 小林沙羅 穴澤ゆう子
藤澤眞理 大間知覚
15時の部
守谷由香 三宅理恵 加納里美 原田圭 角田和弘
指揮:時任康文 演出:広崎うらん 神奈川フィル
■問い合わせ:03-3503-3111